一本のクレーム電話が教えてくれたこと──“怒り”の奥にあった本当の声

一本のクレーム電話が教えてくれたこと──“怒り”の奥にあった本当の声

「そちらの対応はどうなっているんですか?」

少し強めの声から、その電話は始まりました。
受話器の向こうにいるのは、何度か同じ商品を購入しているというリピーターのお客様。
今回は配送の遅延と、問い合わせ後のフォロー不足に対するクレームでした。

一見すると、「またクレームか……」と思ってしまいそうな内容です。
けれど、話を丁寧に聞いていくうちに、このお客様の“怒り”は、単なる不満ではないことが見えてきました。

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怒りの裏側にあったのは、「期待」と「不安」だった

お客様は、いつも家族の記念日の前にその商品を購入していました。
「いつも間に合っていたから、今回も大丈夫だと思っていたんです。」
そう前置きしながら、今回の遅延がいかに予定を狂わせてしまったかを、ぽつりぽつりと話してくれました。

「遅れることがダメなんじゃなくて、
どうなっているか教えてもらえなかったのが、正直つらかったです。」

その一言で、このクレームの本質がはっきりしました。
問題は“遅延”そのものではなく、“状況が分からないまま放置されている”という不安
そして、「いつもちゃんとしてくれていたのに」という、企業への期待が裏切られてしまった感覚でした。

対応が変わると、会話のトーンも変わる

こちら側の対応も、そこから自然と変わっていきます。
「ご不安な思いをさせてしまい、本当に申し訳ございません。」
「いつも大事なタイミングでご利用いただいていたのに、今回十分なご案内ができませんでした。」

単に「遅れてすみません」ではなく、
「その状況で、どんな気持ちになったか」に寄り添う言葉を意識してお伝えしました。

すると、お客様の声のトーンが少し柔らかくなり、
「分かってくれるなら、もうそれでいいんです。
ただ、今後同じことが起きないようにしてほしくて。」
と、最後には「これからも使いたいんですけどね」と笑い交じりに話してくださるまでになりました。

クレームは「関係を切るため」ではなく「続けるため」に出されることが多い

私たちはつい、クレームというと「関係が壊れたサイン」のように感じてしまいます。
しかし実際には、「まだこの会社に期待しているからこそ、あえて声を上げてくれる」お客様も少なくありません。

声を上げずに離れていく人のほうが、実は圧倒的に多い。
だからこそ、クレームとして届いた声は、企業にとって貴重な“最後のチャンス”でもあります。

怒りの手前にあった期待、
不安の裏側にあった信頼。
そこにきちんと目を向けることができれば、クレーム対応は「謝って終わり」の作業ではなく、
関係をつなぎ直す大事なコミュニケーションへと変わっていきます。

「聞く場所」を用意できているかどうか

今回のように、一本の電話から多くの学びを得られることがあります。
しかし、その前提として必要なのは、お客様の声を受け止めるための「聞く場所」があることです。

忙しい現場では、どうしても目の前の業務が優先されます。
結果として、「また後で」「そのうち対応する」という判断になりがちです。
その積み重ねが、お客様の不安や不信感を大きくしてしまうことは、決して珍しくありません。

だからこそ、クレームや相談を受け止める専門の窓口を用意し、
そこに集まった声を冷静に分析し、現場と経営にフィードバックする仕組みが重要になります。

CWSでは、お客様相談室の代行サービスを通じて、
企業の“聞く力”をサポートしています。
一本のクレーム電話を、「信頼を取り戻すきっかけ」に変えていけるような仕組みづくりをお手伝いすることが、私たちの役割です。

おわりに──声の奥にあるものを見る

クレームとして届く声は、ときに厳しく、ときに感情的に聞こえます。
けれど、その奥には必ず「こうあってほしい」「ちゃんと向き合ってほしい」というメッセージが隠れています。

表面だけを見てしまうと、“面倒なクレーム”にしか見えません。
しかし、その奥にある感情や背景に目を向けることができれば、
それは企業にとって、サービスを見直し、信頼を深める大きなヒントになります。

一本の電話に込められた、たった一人の声。
そこから見えてくるものを、私たちはこれからも大切にしていきたいと思います。


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