「カスハラ」と「正当なクレーム」は何が違う?現場が混乱しないための線引き基準

■ カスハラとは?企業が抱える新たなリスク

厚生労働省はカスハラを「顧客等からの著しい迷惑行為」と定義しています。
具体的には、暴言・威嚇・過度な要求・長時間の拘束・業務妨害など、社会通念上許容できない行為を指します。
こうした行為は、従業員の心身に大きな負担を与え、離職やメンタル不調を招く原因となります。

企業としては、従業員を守る安全配慮義務の観点からも、カスハラ対策を行う必要があります。
2022年のパワハラ防止法の改正以降、企業がカスハラを放置することはリスクとなり、今や「現場任せ」では済まされない課題になっています。


■ 正当なクレームとの違いは「言動」と「要求の合理性」

一方で、正当なクレームは“企業への期待”から生まれる声です。
「商品に不具合があった」「対応が遅い」「説明が不十分だった」といった意見は、企業にとってサービス改善の重要な手がかりになります。
つまり、クレームは本来「問題解決や改善のための建設的な意見」であり、カスハラとは目的も性質もまったく異なります。

両者を見分ける最も大きなポイントは、「要求内容よりも言動にある」と言われます。
例えば、同じ内容の苦情であっても、冷静に要望を伝える場合と、怒鳴り声や人格攻撃を交えて伝える場合では意味が大きく違います。
また、度を超えて繰り返し連絡してくるケースや、業務時間外の執拗な要求も、合理性を欠く行為としてカスハラに該当することがあります。


■ 現場で迷ったときの判断と対応の考え方

実際の対応現場では、明確な線引きを一瞬で判断するのは難しいものです。
そんなときに有効なのが、「要求内容」「言動」「頻度」の三つの軸で整理する方法です。

・要求内容が合理的かどうか(例:返金・交換などが妥当か)
・言動が社会通念上許される範囲か(例:暴言・侮辱・脅迫があるか)
・行為が繰り返されているか、過度に長時間続いているか

この三点を踏まえることで、感情的にならず冷静に判断しやすくなります。
また、現場担当者が「一人で抱え込まない仕組み」を整えることも大切です。
相談窓口や上司へのエスカレーションルートを明確にしておくことで、対応者の心理的負担を軽減できます。
外部の第三者機関に相談できる体制を設ければ、中立的な視点での判断も可能になります。


■ 線引きの共有が、企業の信頼を守る

カスハラとクレームの違いを理解し、現場での判断を統一することは、企業全体の信頼を守るうえで欠かせません。
「正当な意見は改善に活かす」「暴力的・威圧的な言動は許さない」という方針を明文化し、社内で共有することが第一歩です。
そのうえで、従業員教育と相談ルートの整備を進めれば、現場のストレス軽減だけでなく、顧客満足度の向上にもつながります。


■ おわりに

CWSでは、企業と従業員の双方が安心してコミュニケーションできる環境づくりを支援しています。
お客様相談室の代行や外部相談窓口の設置を通じて、現場の声を適切に受け止め、企業の信頼を守る仕組みづくりをお手伝いしています。
「どこまでが正当なクレームなのか判断に迷う」「従業員を守る体制を整えたい」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。

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