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国内で出る食品の産廃は年257万トン。
これほど大量の食品が廃棄されるのは、なぜなのか?
それは安全安心に対する日本の消費者の厳しさ。
壱番屋がダイコーに廃棄を委託した冷凍カツは約60万枚にのぼり、大半は製造中に異物が混じった恐れのあるもの。「安全が担保されない商品は廃棄している。減らすよう努めているが、一定の廃棄はやむを得ない」(壱番屋経営企画室)
実際、異物混入の指摘が消費者から相次いだ日本マクドナルドは客足が遠のき、大量閉店に追い込まれた。厳しい競争にさらされる食品・外食企業は、廃棄に伴う損失より消費者の信頼を重視する。
異物混入への対応だけではない。日本の食品業界には賞味期限について「3分の1ルール」と呼ばれる商慣習がある。
賞味期限が6カ月の場合、メーカーなどが小売店に納品できるのは製造から2カ月まで。さらに小売店は賞味期限まで2カ月を切った商品は店頭から下げる。商品はその後、返品されたり廃棄されたりする。
メーカーや農林水産省がルールの緩和に動いているが、道半ば。まだ食べられるものも、廃棄に回ったり安く売られたりしている。
壱番屋の冷凍カツは「廃棄物」から「食品」に化けた後、スーパーなどに渡るまで何度も転売された。関わったある業者は「特売用の商品を常に探している。どこから仕入れたかなんて普通は聞かない」。こうした「格安市場」は、廃棄食品が出回る土壌になった。
今回の問題は、廃棄物処理法の限界も浮き彫りにした。産廃業者に管理票による処理の報告を求めているが、ダイコーはこれを偽造していた。「産廃業者に書類を偽造されると、見抜くのは難しい」。
地元産廃業者たちは、業界中堅のダイコーが、相場よりも安く壱番屋から廃棄処分を請け負っていたと指摘。壱番屋は「価格の安さや信頼性などで委託先を決めてきた」と話す。
それに、機密書類の廃棄を頼むなら認証を持つ業者を選ぶなど処理の品質に関心を払うが、食品は安さ重視になりやすい。
今回の問題は根が深すぎる。
安全神話崩壊だけでなく貧困問題などにも発展しかねない。