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中小企業におけるハラスメント対策は、企業を守る上で必要不可欠です。しかし、相談室の設置・運営には費用やノウハウが必要で、特に中小企業にとっては大きな負担となることも。この記事では、弁護士事務所や社会保険労務士事務所への委託、専門サービスの利用、社内運営など、様々なハラスメント相談室の運営方法を解説。それぞれのメリット・デメリット、費用相場、守秘義務についても詳しく説明します。さらに、アルバイト1人分以下の費用で相談室を運営するためのポイントも紹介。この記事を読めば、自社に最適な相談室運営方法を見つけ、限られた予算内で効果的なハラスメント対策を実現できます。
ハラスメント相談室の必要性
近年、企業におけるハラスメント対策は、企業の社会的責任としてだけでなく、企業経営を守る上でも不可欠な要素となっています。特に、従業員規模が比較的小さい中小企業においても、ハラスメント問題は深刻な影響を及ぼす可能性があり、適切な相談体制の構築が求められています。
中小企業におけるハラスメントの実態
中小企業では、限られた人員の中で業務が回っていることが多く、一人ひとりの従業員の負担が大きくなりがちです。このような環境下では、人間関係の悪化やストレスの蓄積が生じやすく、ハラスメントが発生するリスクが高まります。また、経営者や管理職のハラスメントに対する意識が低い場合や、相談できる窓口が整備されていない場合、被害が深刻化したり、隠蔽されてしまう可能性も懸念されます。
厚生労働省の調査によると、職場のパワーハラスメントの相談件数は増加傾向にあり、中小企業においても無視できない問題となっています。
相談窓口の設置が企業を守る
ハラスメント相談窓口を設置することは、被害を受けた従業員を救済するだけでなく、企業を守る上でも重要な役割を果たします。相談窓口を通じて早期に問題を把握し、適切な対応をとることで、被害の拡大を防ぎ、企業の評判や信頼を守ることに繋がります。また、ハラスメント対策を積極的に行うことは、従業員のモチベーション向上や生産性向上にも寄与し、企業の健全な発展に貢献します。さらに、ハラスメントに関する訴訟リスクを軽減する効果も期待できます。
外部委託サービスでハラスメント相談室を運営する方法
外部委託サービスを利用することで、専門的な知識と経験を持つ第三者にハラスメント相談窓口を運営してもらうことができます。主な委託先は弁護士事務所、社会保険労務士事務所、そしてハラスメント相談窓口専門サービスです。それぞれの特徴を理解し、自社に最適なサービスを選びましょう。
弁護士事務所、社会保険労務士事務所への委託
弁護士事務所や社会保険労務士事務所にハラスメント相談窓口を委託するメリットは、法的な観点からのアドバイスを受けられることです。特に、問題が深刻化した場合の対応や、訴訟に発展した場合のサポートは心強いでしょう。弁護士は紛争解決のプロフェッショナルであり、社会保険労務士は労働問題の専門家です。彼らの専門知識は、企業のリスク管理に大きく貢献します。ただし、費用は比較的高額になる傾向があります。
ハラスメント相談窓口専門サービスの利用
近年、ハラスメント相談窓口専門サービスを提供する企業が増えています。これらのサービスは、相談受付から調査、報告書作成までを一括して請け負うため、企業の負担を軽減できます。また、専門のコンサルタントによる研修や、再発防止策の提案なども提供している場合があり、総合的なハラスメント対策が可能になります。費用は弁護士事務所や社会保険労務士事務所に委託するよりも比較的安価な場合が多いです。サービス内容や費用は企業によって異なるため、複数のサービスを比較検討することが重要です。
外部委託のメリット・デメリット
外部委託には、メリットとデメリットの両方があります。自社の状況に合わせて、どちらを選択するのが適切か判断する必要があります。
費用を抑え専門性を確保できる
外部委託の最大のメリットは、専門性を確保しながら費用を抑えられる点です。社内に専門家を雇用するよりも費用対効果が高く、質の高い相談体制を構築できます。特に、中小企業では専門家の雇用が難しい場合もあるため、外部委託は有効な選択肢となります。職場におけるパワーハラスメント対策が
事業主の義務になりました!(経済産業省)でも、外部相談窓口の設置が言及されています。
社内事情の把握が難しいケースも
外部委託のデメリットとしては、社内事情の把握が難しいケースがある点が挙げられます。外部の専門家は、社内の文化や人間関係を完全に理解しているわけではないため、適切な対応が難しい場合もあります。そのため、外部委託する場合でも、社内との連携を密にすることが重要です。
社内でハラスメント相談室を運営する方法
社内でハラスメント相談室を運営する場合、適切な担当者の選任と研修、相談しやすい環境づくりが重要です。相談窓口を社内に設置することで、迅速な対応や社内事情を踏まえた解決策を期待できますが、担当者の負担や公平性の確保など、注意すべき点も存在します。
担当者の選任と研修
相談室の担当者は、相談者の信頼を得られる人物を選任することが重要です。人事部や総務部など、中立的な立場にある社員が適任とされます。また、複数名の担当者を配置することで、相談者の性別や年齢に合わせた対応が可能になります。担当者には、ハラスメントに関する専門知識や相談対応スキルを習得させるための研修を実施しましょう。eラーニングや外部機関による研修などを活用することで、効果的な研修を行うことができます。厚生労働省の「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」も参考に、研修内容を検討しましょう。
社内相談窓口設置における注意点
社内相談窓口を設置する際には、相談しやすい環境づくりが重要です。相談窓口の場所や時間、連絡方法などを明確に周知し、相談者が安心して相談できる雰囲気を作る必要があります。相談内容の秘密保持を徹底し、相談者への二次被害を防ぐための対策も必要です。プライバシーに配慮した相談室の設置や、相談記録の適切な管理などが求められます。また、相談窓口の設置だけでなく、ハラスメント防止のための社内規定を整備し、周知徹底することも重要です。相談窓口の運用状況を定期的に見直し、改善していくことで、より効果的なハラスメント対策を実現できます。
社内運営のメリット・デメリット
社内運営には、社内事情を把握しやすい、迅速な対応が可能といったメリットがあります。一方で、担当者の負担が大きくなる、公平性を保つのが難しいといったデメリットも存在します。これらのメリット・デメリットを踏まえ、自社に最適な運営方法を選択することが重要です。
社内事情を把握しやすい
社内での相談窓口運営は、社内事情や人間関係を把握している担当者が対応できるため、より適切な対応や解決策を期待できます。また、日頃から社員とコミュニケーションをとることで、ハラスメントの未然防止にも繋がります。ただし、社内に情報がある。ということはこの守秘義務を守ることが非常に難しくなります。ハラスメント相談室のために別室を用意して、会話が聞こえなくするなどの物理的な対策も必要ですし、社内の友達同士の会話などでつい喋ってしまうなどの危険もあります。
担当者の負担が大きくなることも
相談対応に加え、記録管理や関係者への聞き取りなど、担当者の負担は大きくなる可能性があります。相談件数が多い場合や、深刻な事案が発生した場合には、担当者の負担が増加し、本来の業務に支障をきたす可能性も考えられます。そのため、担当者の負担を軽減するための体制づくりや、外部機関との連携などを検討する必要があります。
ハラスメント相談室の運営で守るべき守秘義務
ハラスメント相談室を適切に運営していく上で、守秘義務は非常に重要な要素です。相談者のプライバシー保護はもとより、企業としての信頼性維持、そして法令遵守の観点からも、徹底した守秘義務の履行が求められます。
相談内容の秘密保持の重要性
ハラスメント相談は、非常にデリケートな内容を含むことが多く、相談者が安心して相談できる環境を構築するためには、相談内容の秘密保持が不可欠です。相談内容が漏洩した場合、相談者は二次被害を受ける可能性があり、また、企業の信頼も大きく損なわれます。秘密保持を徹底することで、相談者が安心して相談できる環境を作り、問題の早期解決を促進することに繋がります。
情報漏洩を防ぐための対策
相談内容の情報漏洩を防ぐためには、様々な対策を講じる必要があります。例えば、相談記録を施錠できる場所に保管する、アクセス権限を設定する、相談員への守秘義務に関する研修を実施する、相談記録の電子化による適切な管理などが挙げられます。また、相談内容を口外しないことを相談員に誓約させることも有効です。相談窓口の運営方法によっては、記録媒体を暗号化したり、アクセスログを記録するなどの対策も重要になります。さらに、電話対応などでは電話の声が他の部署の人に聞こえなくする必要がありますので、自社内にハラスメント相談室を設置する場合、別室にするなどの配慮がない場合、せっかくハラスメント相談室を設置しても正常に機能しない場合があります。
守秘義務違反の罰則
守秘義務違反には、法律上の罰則が規定されている場合があります。例えば、個人情報保護法では、個人情報の漏洩に対して罰則が設けられています。また、特定個人情報保護評価の対象となる事業者は、主務大臣による勧告、命令、公表等の対象となり、違反した場合には罰則が科される可能性があります。 さらに、民事上では、損害賠償責任を負う可能性もあります。個人情報保護委員会や総務省のウェブサイトなどで、具体的な罰則規定を確認することをお勧めします。
アルバイト1人分以下の費用で相談室を運営するには
ハラスメント相談室の設置は、企業にとって重要な責務ですが、特に中小企業にとっては費用面が大きな課題となる場合もあります。しかし、工夫次第でアルバイト1人分以下、あるいはそれに近い費用で相談室を運営することが可能です。ここでは、外部委託サービスと社内運営それぞれの費用相場や、費用を抑えるためのポイントを解説します。
外部委託サービスの費用相場
外部委託サービスの費用は、委託先やサービス内容によって大きく異なります。弁護士事務所や社会保険労務士事務所への委託は、相談対応1件あたり数万円かかる場合もあります。一方、ハラスメント相談窓口専門サービスの中には、月額数万円で相談受付から報告書作成まで対応してくれるサービスも存在します。相談件数が少ない中小企業であれば、後者のような専門サービスを利用することで費用を抑えることができます。
弊社では社員数など会社様の規模や相談件数に応じた柔軟な料金設定でハラスメント相談室運営をお引き受けしています。ぜひ当ページのお問い合わせよりお気軽にお問い合わせください。
社内運営にかかる費用
社内でハラスメント相談室を運営する場合、主な費用は担当者の人件費と研修費用です。担当者を専任で配置する場合、人件費は年間数百万円に上る可能性があります。さらに、前述のとおりですが、電話対応などでは電話の声が他の部署の人に聞こえなくする必要がありますので、自社内にハラスメント相談室を設置する場合、別室にするなどの必要があり、防音性のあるパーテーションで区切るなどの費用も必要です。一方、既存の社員を兼任させる場合は、人件費を抑えることができますが、担当者の負担が増加する可能性があるため注意が必要です。研修費用は、外部の研修機関を利用する場合、数万円から数十万円程度かかります。eラーニングなどを活用すれば、費用を抑えることも可能です。
厚生労働省の職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)では、ハラスメント対策に関する様々な情報を提供しており、社内研修の参考資料として活用できます。
費用を抑えるためのポイント
ハラスメント相談室の運営費用を抑えるためには、以下のポイントを検討することが重要です。
外部委託サービスを活用する
相談件数が少ない場合は、相談窓口専門サービスなどを活用することで、費用を抑えながら専門性を確保できます。複数のサービスを比較検討し、自社に最適なサービスを選択しましょう。
社内担当者を兼任させる
社内運営の場合、既存の社員を兼任させることで人件費を削減できます。ただし、担当者の負担が増加しないよう、業務分担や相談体制を適切に整備する必要があります。
無料の研修資料を活用する
厚生労働省など、公的機関が提供する無料の研修資料を活用することで、研修費用を抑えることができます。
これらのポイントを踏まえ、自社の規模や状況に合わせた最適な運営方法を選択することで、アルバイト1人分以下の費用で効果的なハラスメント相談室を運営することが可能になります。
中小企業におすすめのハラスメント相談室運営方法
中小企業にとって、ハラスメント対策は企業の持続可能性に関わる重要な課題です。限られたリソースの中で、最適なハラスメント相談室の運営方法を選択することが求められます。ここでは、相談件数や予算、社内体制などを考慮した上で、中小企業におすすめの運営方法を具体的に解説します。
相談件数や予算に合わせたサービス選び
相談件数が少ない、あるいは予算が限られている中小企業には、外部委託サービスの中でも、相談窓口専門サービスの活用がおすすめです。相談対応業務に特化したサービスは、弁護士事務所や社会保険労務士事務所への委託よりも費用を抑えられる傾向があります。また、近年増加しているWeb会議システムやチャットツールを活用した相談窓口サービスは、より低コストでの運用を可能にします。相談件数が増えてきた場合は、対応可能な相談員数を柔軟に変更できるプランを選ぶなど、状況に合わせたサービスの選択が重要です。
外部委託と社内運営の併用
社内事情の把握のしやすさと、専門性をバランスよく両立するためには、外部委託と社内運営を組み合わせる方法も有効です。例えば、一次相談窓口を社内で設置し、より専門的な対応が必要な場合や、社内での対応が難しいと判断された場合は、外部の専門機関に引き継ぐという体制です。これにより、気軽に相談できる窓口を社内に確保しつつ、専門家による適切な対応も可能になります。
さらに、外部委託サービスを活用しながら、社内担当者への研修を実施することで、社内でのハラスメント対応能力の向上を図ることも可能です。費用を抑えつつ、より効果的なハラスメント対策を実現するためには、自社の状況に合わせた柔軟な対応が重要です。
まとめ
中小企業にとって、ハラスメント相談室の設置は従業員の権利を守るだけでなく、企業を守る上でも重要です。本記事では、外部委託と社内運営の2つの方法を中心に、それぞれのメリット・デメリット、守秘義務の重要性、費用相場などを解説しました。費用を抑えたい企業は、外部委託サービスの活用がおすすめです。相談件数が少ない場合や予算が限られている場合は、社内運営と外部委託を組み合わせる方法も有効です。最終的には、自社の状況やニーズに合わせて最適な方法を選択することが重要です。相談件数や予算、社内リソースなどを考慮し、専門家への相談も検討しながら、適切なハラスメント対策を実施しましょう。