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いい業務マニュアルとはどんなものでしょう?
このブログでもたびたび、業務やクレーム対応、トラブル対応などのマニュアルを事前に作って、それを周知させることをお勧めしていますが、一言で「いい業務マニュアルを作って周知させる」と言っても具体的にどのようなマニュアルを作って、どのように周知させて機能させればいいのでしょうか?
目次
いい業務マニュアルがある会社とは?
いいマニュアルがある会社では、ベテラン社員でも、少なくとも月に数回程度は、業務マニュアルを開きます。
ベテランならマニュアルなど見ないで自分で判断をすべきだ!
そう考えた方。業種や業界にも拠りますが、多くの場合、それは間違いですし、まして、ネットで検索してこの記事を読んでくださっている方、少なくとも「業務のマニュアルが必要だ」「いいマニュアルってなんだ?」と考えている方の職場であれば、絶対に、「ベテランでも読む意味のあるいいマニュアル」を作ることを目指すべきです。
では、いいマニュアルとはどういうものでしょうか?「いいマニュアル」を端的に言うなら次の3つがすべて備わっていることです。
いいマニュアル 3つの条件
①事前の経験や知識による差が出にくい書き方がされている
自社のマニュアルについて、よく見直してください。「業務マニュアル」や「顧客対応のマニュアル」として見るよりも、「家電のマニュアル」として想像してみるとわかりやすいかもしれません。「会社のマニュアル」というものを何社分も読んだことがある人は少ないと思いますが、家電のマニュアルであれば、ほとんどの方が、複数、見たことがあるからです。
前述の通り、「①事前の経験や知識による差が出にくい書き方がされている」という部分は多くのマニュアルでは少なくとも一部分はできています。会社で言えば、入社直後や配置転換でその業務を開始したとき、家電で言えば購入直後向けの説明部分です。
家電のマニュアルを思い浮かべると、家電を買ってきて、設置し、使い始めるまでの手順は、多くの場合、めんどくさいと感じるほど、親切に書いてあります。
しかし、たとえば「次に〇〇ボタンを押します」と書かれているのに、本体をどんなに探しても「〇〇」と書かれたボタンが存在しない!探しても探しても見つからず、仕方がなくマニュアルを隅から隅まで読んだら、別のページに説明書きがあったり、場合によってはマニュアルとは別の紙が同封されていて、本体の写真に矢印で「〇〇ボタン」という説明書きが書いてあったりして「イラっ」とさせられたことはありませんか?これが①ができていないマニュアルの例です。
こうしたことは、以下のどちらかの方法で回避できます。
- A)「次に〇〇ボタン(P12参照)を押します」とボタンの案内ページを記載する
- B)本体に書かれている名前でボタン名を統一する(本体を見れば〇〇ボタンがわかりやすく存在している)
つまり、「〇〇ボタン」の説明書きを読んだ人も、読んでいない人も、同じ行動ができるようにするのです。
②対応する社員による業務のムラが発生しないで、同じように業務が遂行できる指示になっている
ご存じの通り、マニュアルは謎解きの推理小説ではありません。「少し触れた伏線の謎が、ラストシーンでやっと意味が分かる!楽しい!」といった書き方が不要なのはもちろんですが、「マニュアル内の別のページに書いてあるんだから、すべて何度か読めばわかるだろう」という書き方ではダメです。マニュアルを読む社員は、マニュアルを隅から隅まで精読することが理想ですが、一度読んだからと言ってすべてを理解してすべてを記憶できる人ばかりではありません。最も理想なのは、たとえ一部分でも、同じところを読めばほぼ同じ理解をして、ほぼ同じ対応ができる。想像できる。そうなるように書かれていることです。
また、単なる家電のマニュアルではなく、会社のマニュアルであれば単に「ボタンを押す」という手順の指示だけでなく「なぜそれをする必要があるのか」を「理解」させることも必要です。理解することなく、単に手順を覚えさせるだけだと、どうしても形だけになってしまい、結果、おざなりにただ業務をこなす社員や応用が効かない社員を量産してしまう結果につながります。
「自社のマニュアルは、誰が読んでも同様の理解に到達ができるような書き方になっているだろうか?」そういう視点でもう一度マニュアルの確認を行ってみてください。
③欲しい情報が見つけやすい
そして、最も忘れられてしまいやすいのが、「③欲しい情報が見つけやすい」への対応です。
冒頭で「ベテランが月に数回マニュアルを読む」ということに少しでも疑問を持った方の会社のマニュアルは間違いなくこの③ができていません。
家電を買って、いつもの使い方に全く問題がなくなった後で、少し違う使い方をしたくなった場合や、どこかに不具合が出た場合を考えます。
マニュアルはしっかり手元にあるのでマニュアル内で方法を探しますが、マニュアル内で必要なページを簡単に探せなかった場合、皆さん、適当にカンで触ってみたり、ネットで検索をして調べませんか?
これが会社の業務で発生すると、社の存続すら脅かす恐ろしいことになりかねません。
なぜなら、社内で規定された方法や統一された方法ではなく、各自の知識や思いつき、ネットで検索した、ばらばらな方法でそれぞれが業務を進めれば、当然、社として統一されたサービスを提供し続けることは不可能になります。これが顧客対応で発生すれば、「あなたはダメだと言ったけど、先日あの人は良いと言った」というような問題につながりますし、レストランの厨房で発生すれば、料理人によって料理の味が異なることになり、商品の価値が一定せず、店としての存続すら危うくなるでしょう。
業務に関することは、このマニュアルを見ればすぐにわかる。
それが、「③欲しい情報が見つけやすい」ができているマニュアルです。この状態であれば、わからないことがあれば、まずマニュアルを開くという習慣がつくでしょう。
つまり、ベテラン社員が時々でもマニュアルを見ない会社のマニュアルは、いいマニュアルとは言えません。
マニュアルは業務のルールブック
マニュアルはある業務を行う上での、ルールブックです。会社の「法」の一部であるとも言えます。もし、あなたが法律相談をする必要が出た時あなたの疑問に対して……
- A) 六法全書や判例集を調べて答えてくれる弁護士
- B) ネットで「〇〇知恵袋」や第三者のブログを検索して答えてくれる弁護士
- C) 自分の記憶だけで何も見ないで答えてくれる弁護士
どの弁護士を信用しますか?
Bが論外なのは言うまでもありませんが、Cの弁護士についても、「〇年〇月の△△事件の判例で……」「〇〇法、第〇章、××の……」などとすべての法律や判例を正確に暗記しているならいいでしょうが「10年位前に似たような判例があったはずだから、たぶんこれで大丈夫です」程度の受け答えだったら信用して任せることができるでしょうか?
そう考えれば、いいマニュアルがある会社ではベテランでも月に数回はマニュアルを見る。という意味が理解しやすいのではないでしょうか?
いいマニュアルを作った!だけではダメ!マニュアルを機能させるには?
いいマニュアルが完成したからといって、それを現場に配布するだけで業務が改善され、会社全体がうまく回るでしょうか。
そんなに簡単には行きません。
ではマニュアルを作った後、何が必要なのでしょう?
マニュアルを完成させたら、マニュアルの周知と理解を広めること。つまり教育することと、常にマニュアルを更新し続けるブラッシュアップが必要です。
教育に関しては、すでにマニュアルが現場に浸透していて、部署内で先輩による後輩指導が自然とできている場合、特別な教育の時間などを設けなくてもうまくマニュアルが浸透していく場合もありますが、新規にマニュアルを作成した場合や大幅に改変した場合は、絶対に教育の時間が必要です。
マニュアル導入初期や新入社員に対して、しっかりと教育をしたうえで、ベテランも含めた全体の社員ににも定期的に復習や、更新個所の周知の時間をとる必要もあります。
また、ブラッシュアップでは、マニュアルの内容が古くなってしまわないようにする更新はもちろん、現場の意見や実情をヒアリングしたうえでマニュアルに反映していく必要があります。これをやらないと「マニュアルにはこう書いてあるけど、実際は違う方法でやっている」というマニュアルとの乖離が生じていずれマニュアルが有名無実となり、最終的にはすべて機能しなくなってしまいます。
しかし、定期的なマニュアルのブラッシュアップと社員への教育を行うことで業務は円滑になり、現場で発生する問題は激減します。それでも発生する問題も順次マニュアルに反映していくことでさらに問題は減少します。
マニュアルと教育の充実だけで、すべての問題が解決できる状態になるわけではありませんが、大きなイレギュラー以外はすんなりと解決されて、業務が回る現場にすることができれば、社員の負担やストレスが軽減されることで現場の雰囲気が明るく変わっていくことを実感できるでしょう。
その時が、御社にとっての「いいマニュアル」が完成した時といえるでしょう。