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「苦情」は、何らかの不利益を被ったりした場合に不満を抱くことを言い、またその不満を他者に訴えることも指します。つまり「苦情」は字義通り「情」の一種を指している一方で、その感情を吐露する行為も指しているということになります。一方「クレーム」はもともと何らかの要求をする行為自体を指しており、そこから苦情を訴える行為を指すようになっています。つまり「クレーム」は感情ではなく行為のみを指しています。しかし、今日では「苦情」ももっぱら行為の意味でのみ用いられるようになっていると言えるでしょう。
また、行為を表す場合の「苦情」とクレームの間にも若干の用法の違いが存在するように思われます。すなわち「クレーム」はサービス業者と消費者の間で交わされる苦情や、場合によっては賠償・補償の請求などを表すのが一般的です。たとえば「うちの製品の品質管理について、先日お客様からクレームがあった」のような表現で用いられます。これに対し、「苦情」の方はもっと用いられる範囲が広く、「ゴミ捨てのことで、昨日隣家から苦情があった」のように、人対人であればどういった関係であっても用いることが可能です。だから、「ゴミ捨てのことで、昨日隣家からクレームがあった」とすると、日常生活の話なのに何かビジネストークをしているようで若干の違和感が伴うわけです。
このように、クレームは用いられる場面がある程度限られているのに対し、苦情はより広く一般的な用いられ方をするという傾向の違いがあると考えられます。