受付時間 9:00 -17:00[土・日・祝日を除く]
以前『「クレームゼロ運動」をやるのは典型的ダメ会社である理由(ダイヤモンドオンラインより)』という記事でクレームをゼロにしようとすれば従業員の隠蔽が必ず発生するという話をしましたが、こちらの記事、6年近く前に書いた短い記事なのですが、とても多くの方にお読みいただいていて、皆さんのクレームを減らすことへの関心が高いのだと痛感させられます。
今回はこの記事をブラッシュアップして、どうしてクレームゼロが良くないのか。ということについて、より掘り下げてみたいと思います。
以下でクレームゼロの危険性を解説していますが、決して、「クレームの出ないように良い商品を作ろう」とか「クレームがなくなるように努力しよう」という取り組みを否定するものではない。という点をご理解の上お読みいただけると幸いです。
目次
そもそもクレームとは?
クレームと言われてその意味を知らない方はいないと思います。
ただ、『クレーム=苦情・文句』とだけ考えている方は非常に多いのではないでしょうか?
コレこそが、前回の記事でも述べた、クレームゼロ運動が危険であり、典型的ダメ会社となってしまうという部分に直結していると私は考えます。
つまり、『クレーム=全て悪』この考え方がとても危険であり、会社をダメにしてしまう原因であるのです。
クレームゼロ!を掲げても会社のイメージはアップしない。
私は、クレームがゼロで有ることを売りにしている会社や商品を見たことがありません。
「クレームゼロ運動」「クレームゼロを目指す」までは拝見したことがありますが、流石に、「この商品はクレームゼロです!」という売り方はうまくいかない。ということを皆さん、無意識に感じているのでしょう。
クレームゼロとは少し違うのですが、こんな例があります。
東日本大震災直後、ある大手ハウスメーカーがこんなキャッチフレーズを打ち出しました
「東日本大震災での倒半壊・0!」
似たようなキャッチフレーズを打ち出したメーカーさんは多くあったのですが、完全に0ということで大いに注目を浴びて、一時的に問い合わせ数が数倍にアップしたそうです。
しかし、その年、その翌年のそのハウスメーカーさんの業績は全く上がっていなかったどころか、逆に数字は少し下がっていたと記憶しています。
何故でしょう?
当のハウスメーカーさん、実は、西日本を中心としている会社で、東北地方ではほとんど建築の実績がなかったそうです。つまり、東日本大震災での被災地域にほぼ家を建てていなかったのです。
この事がネット上やライバル会社の営業の口コミで指摘、拡散されました。
おそらくこのことを知った人たちは、「この企業は都合のいい事実だけ発表する会社だ」「隠蔽体質だ」などと感じたのではないでしょうか?
こうした手前味噌の売り文句を大々的な売り文句にした結果、却って企業のイメージダウンとなってしまった結果が、当年、翌年の売上のマイナスにつながったと私は考えています。
また、もう少しわかりやすい例として、いじめ問題があります。
毎年のようにいじめを苦にして自殺をする子どもたちの悲しいニュースを目にします。学校のクラスメートの実名が書かれた遺書が見つかるような場合もありますが、そんな中であっても、学校側が「いじめはなかった」と発表した場合、あなたは、「そうか、いじめはなかったんだな」と納得するでしょうか?
むしろ、「この学校(校長)は、隠蔽体質だな」とか、「子どもたちの現状を把握できていないのだな」といったマイナスなイメージを持ちませんか?
つまり、苦情がない、クレームゼロが、もし事実だったとしても、それを全面に押し出して、お客様の気持ちにプラスに作用することは少ないと考えられます。
そうであれば、「クレームゼロ」を掲げる理由はあるでしょうか?
クレームは悪?クレームはマイナス?クレームの種類を考える。
『クレーム=全て悪』この考え方がとても危険であり、会社をダメにしてしまう原因であると述べましたがではクレームが多いことは良いことでしょうか?
コレは単純にNoです。
クレームが多いことが良いわけではありません。
ではクレームゼロは良いことでしょうか?
コレも単純にNoです。
「あなたの不満買い取ります!」というキャッチフレーズで株式会社インサイトテックさんが運営する「不満買取センター」(https://fumankaitori.com/)というサービスがありますが、私自身がこのサービスを深く知っているわけではありませんが、こちらのサービスが『不満があるということは改善の余地があり、ニーズが有る。そして、そこに市場がある。』という発想のもとに生まれ、運営されているのだろうということは容易に想像がつきます。
不満はクレームの一つです。
そうです。クレームには良いクレーム、悪いクレームがあります。
そして、良いクレームでも悪いクレームでも、「役に立たないクレームなどない」という考え方を持ったほうが会社の経営やサービス・商品の改善に絶対に役に立つということを忘れないで頂きたいのです。
また、クレームにはお客様から届く外部からのクレームだけでなく、社内から出る内部のクレームが有ることも忘れないでください。
『クレームゼロを目指すだけ』でも会社が危険になる理由
コレは前回の記事や、前回の記事で引用したダイヤモンド・オンラインさんの記事(https://diamond.jp/articles/-/136805)でも指摘されていることなので要点だけ述べますが、クレームゼロを目指してしまうと、隠蔽が起こります。
この隠蔽で一番恐ろしいのは無意識の隠蔽です。
意識的に隠蔽するつもりがなくても、会社がクレームゼロを目指している、クレームゼロは良いことだ。という意識が社内にあることで、外部からの声でも、内部からの不満でも、「言う必要性がないだろう」「小さなことだし言わないほうがいいだろう」と個人的に判断してしまって、クレームを社内に発信しないということが起こった結果、クレームが埋もれてしまうのです。
ですから、部署や個人単位であっても、クレームゼロを目標にしたり、まして運動として全社で動くことは大変危険です。
さらに、危険なだけでなく、前述のように「クレーム=改善のチャンス」であるので、商品・サービス・社内の就労環境の改善のチャンスを失った。つまり、機会損失であり、会社の成長の足かせとなってしまう可能性が高いのです。
まとめ
今回は、「クレームゼロを掲げると会社がダメになる理由をお客様相談窓口代行会社目線で解説」として、
・クレームゼロを掲げてもユーザーへの印象は良くならないこと
・クレームゼロを掲げることで無意識の隠蔽が起こること
・クレームゼロによって、機会損失が発生して、結果会社にマイナスになること
などを述べました。
前述のように、決して、「クレームがなくなるように努力すること」が悪いということではないことは改めて申し上げます。
弊社では、クレーム対応を「チャンス対応」と呼んで、お客さまのクレームに真摯に向き合い対応し、商品やサービス、会社内の労働環境改善のための声を聞くお手伝いをしております。
クレームがどんなに役に立つものであっても、クレームを聞くというのは、とても体力や精神力をつかう作業です。そんなクレーム対応が必要なお客様窓口や、従業員相談窓口の運営はぜひ、弊社へのアウトソーシングをご検討ください。